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金融教育は、子どもたちの未来への種まき
2022/3/14

金融教育は、子どもたちの未来への種まき

片山学園初等科(富山県射水市)

関連するSDGs

 片山学園初等科で実施されている「Agrication&Fincationプロジェクト〜目指すのは、人つくり。〜」は、産学官金が連携しながら3年にわたり児童へ金融教育を実施するプロジェクトです。「20年後を見据えた教育」をカリキュラムポリシーに掲げる同校にとって、金融リテラシーを向上させる先進的な教育は、児童一人ひとりが将来の夢をかなえ、強く生き抜くための、いわば未来への種まき。4年次は富山県のブランド米「富富富」を栽培・収穫し、工場見学やパッケージのプレゼンテーションを経て、ますのすしを商品化するまでの流れを体系的に学びました。5年次に向けてカリキュラムの高度化がすでに始まっています。

児童が能動的に学びに向かえるよう考える

 2023年3月に実施されたのは「株式会社」のことを伝える授業。児童も親しみのある、お菓子を作る会社について学びました。片山学園初等科への金融教育プログラムの実行を、原本幸一校長の伴走役となって推進しているのはJAバンク富山の中田圭亮さん。この日の授業では日本証券業協会のテキスト「チャレンジ! おかしの株式会社」を使い、資金集めの仕組み、株式会社がモノやサービスを提供して世の中を豊かにしていることを伝えました。経営には人やモノ、お金が必要で、事業を行う中で資源を大切にする取り組みや社会貢献活動を行っていることも説明していきます。

 中田さんは「株式会社」の授業で、児童が能動的に学びに向かうアクティブ・ラーニングを実行するためには、さらに一歩踏み込む必要があると考えていました。そこで、より深い理解を促すため、小学生に向けた授業を行っている森永製菓にも協力を仰ぎ、児童にとっても身近な存在を交えて楽しい経験を重ねることで、学びの定着を狙うことにしたのです。

楽しみながら学べる「参加型」を大切にする

 児童たちは期待以上の反応を見せてくれました。森永製菓の近田亜由美さんが登場し、どんなお菓子を知っているか聞くと、普段から食べているおやつの名前を紹介する声が次々と上がります。森永製菓は2017年から小学生向けに「キャラメル教室」を実施しており、2022年度はオンラインでの実施を中心に15校、約1,000名に向けて授業を行いました。本来の「キャラメル教室」は講義内容が決まっていますが、今回はお菓子の企画について紹介している「チャレンジ! おかしの株式会社」をテキストにしていることもあり、森永製菓の商品開発担当とリモートでつながる特別バージョンが企画されました。

 近田さんは授業するとき、45分間の使い方を重要視しているといいます。「途中でクイズを出題したり、キャラメルの箱の組み立てのような手を動かしたりする『参加型』の要素を挟むことで、児童の集中力が途切れにくくなります」と話し、今後も満足度向上のために内容をブラッシュアップしたいと考えているそうです。魅力的な授業を実施していることもあり、近田さんは授業終了後に児童に囲まれ、たくさんの質問に丁寧に答えていました。

 森永製菓では自治体や教育関係者以外からの授業依頼は実はそれほど多くなく、JAバンク富山からの声がけに「産学官金連携の先進性を感じ、私たちも勉強するような気持ちで参加しました。SDGs推進においてのパートナーシップの拡大にもつながりました」とオファーを受けた動機を教えてくれました。

2023年度は資産形成分野の入り口となる授業を実施

 この日は2023年度に、株や投資にまつわる授業を実施する農林中金全共連アセットマネジメントの深澤由里子さんも授業をサポートしました。中田さんがより楽しく、質の高い授業を実現するためには高度な知識を持つ専門家の協力が必要であると考え、金融投資教育のサポートを依頼したのです。「2022年度から学習指導要領の改訂があり、当社でも高校生向けの投資教育を提供し始めたところ。小学生向けの金融教育は前例がないものの、JAバンク富山と連携しながら片山学園初等科のプロジェクトをサポートし、社会的責任を果たしていきたい」と深澤さん。怖いと思われがちでイメージも描きにくい資産形成分野の第一歩になるような授業を考えています。

 日本でもiDeCoやNISAといった税制優遇が受けられる制度が充実してきており、資産形成に意識が向かっています。中田さんも「顧客本位の業務運営を意識し、小学生だけでなく大人も含めた全てのステークホルダーの資産形成ニーズに応えられるよう活動していきたい」と話します。

パートナーシップを拡大し、金融教育を推進

 片山学園初等科の金融教育は、お金のことに限らず、児童が授業を通して多彩な体験と学びを得ながら、将来の可能性や選択肢を拡大しようとするものです。知識を詰め込むのではなく、楽しく前向きに授業に取り組んでくれる企業や団体と連携を図りながら展開されます。
 2022年度には金融庁が金融行政方針の中で、社会人を含めた幅広い世代の金融リテラシーを向上させる体制づくりを柱の一つに掲げました。JAバンク富山ではこれらの方針を踏まえパートナーシップを戦略的に拡大しながら、JAバンクらしい資産形成の取り組みを実施していきたいと思います。

※3月14日(火)に実施された本授業は、2012年にスタートした子どもや若者に対する金融教育推進のための国際的活動「グローバルマネーウィーク」のイベントのひとつです。金融庁のホームページでも実施が紹介されました。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230303/20230303.html

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