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地域との接点を生かし、こども食堂を共催
2024/2/10

地域との接点を生かし、こども食堂を共催

富山県高岡市

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 富山県高岡市の御旅屋セリオで、毎月第2・第4土曜に「オタヤこども食堂」が開かれており、高校生までは無料、大人は子ども同伴なら300円で食事ができます。活動は9年目を迎えましたが、資金や食材、人手不足が常に運営の課題になっています。JAバンクは地域が持続的に発展するための事業に力を入れており、「オタヤこども食堂」と協働することにより、地域全体で子どもたちを支える取組みを実現しました。

子どもたちに温かい食事を気兼ねなく食べてほしい

 2015年12月にスタートした「オタヤこども食堂」は、地域の子どもや同伴する大人に約15,000食を提供してきました。中心となっているのは、会長の高沢満里子さんと田辺恵子さんです。きっかけは高沢さんが民生委員をしていたとき、ひとり親家庭の貧困と子どもの孤食、虐待を目の当たりにしたことでした。その子が「温かいごはんが食べたい」と話したことが後押しとなり活動をスタートさせました。高沢さんは「本当に支援を求めている子どもは声を出しません。1回の開催でほんの数人しか来ていないと思います。それでも続けるのは、温かいごはんを食べてほしいという気持ちがあるからです」と言います。田辺さんも「美味しい食事を楽しんでほしいです。ここは地域の人たちの交流の場所になっています」と続けます。
「オタヤこども食堂」では、身元の提示や来場理由の聞き取りなどを行いません。「こども食堂には貧困のイメージが強く、身元を聞くことで来ない選択をする人がいるからです」と高沢さんは話します。

JA高岡を通して、地元生産者が野菜や果物を提供

 活動を支えているのは、ボランティアです。料理は高沢さん、田辺さんの知人たちが作り、高岡向陵高校や新湊高校の生徒、大学生が配膳を手伝います。受付や誘導、片付けも、地域の人たちが好意で担っています。メディアや自治体の広報を通して活動を知った人が集まってくれるのです。支援してくれる人は増えているものの、人数は流動的です。食材や物品、資金など不安も消える事がありません。
 そんな中でJAバンク富山の宗田友輔さんが、JAバンクが中期戦略に掲げる「農業・くらし・地域における金融仲介機能の発揮」に関わる取組みの一貫で「オタヤこども食堂」の高沢さんや田辺さんから実状を聞く機会がありました。食材や資金面の課題を聞き、運営が難しいことを知り、JA高岡に声をかけたのです。

 JA高岡の農産物直売所「あぐりっち」では、当日中に販売できなった野菜の対応が課題になっていました。「オタヤこども食堂」への食材の提供と、直売所の食品ロスを同時に解決できる方法として考えたのが、バックヤードに食材提供ボックスを設置することでした。開催2日前の夕方に食材を取りに来てもらう体制を整え、昨年6月から生産者がボックスに入れた食材を提供しています。うれしい誤算もありました。その日、販売できなかった食材だけを渡すことになると思っていましたが、生産者が新鮮な野菜や果物、たまごなどをボックスに入れてくれています。JA高岡営農部の形川護次長は「活動を見たり聞いたりする中で、社会インフラとしての機能を果たしていることを実感しています。今後も『オタヤこども食堂』の理念に即しながら、食材調達で貢献させてもらい、栄養のある食事の提供の一助となりたいです」と話します。

 過去には地元の飲食店が「オタヤこども食堂」で料理を提供する機会があったと聞き、JA高岡でも取り組んでみようという形になりました。今回の取組みをきっかけに、JA高岡の活動に目を向けていただけることになれば、更に嬉しく思います。

地元野菜をたっぷりと使った米粉シチューのレシピ考案

 今回のメニューには、米粉シチューが提供されました。2006年から「あぐりっち」に加工品を卸している「愛彩グループ」の原田静江さんが考案したレシピで、旬の白菜や大根がたっぷりと使われました。下準備や当日の調理にも、同グループの原田さんが訪れました。「小麦粉のアレルギーでシチューを食べられない子どもさんがいるので、米粉を使ったシチューを直売所のイベント等で提供しており、とても好評いただいています」と話します。また厨房メンバーになったことで、250人分を作るという今まで経験したことのないチャレンジもありました。「分量の計算など大変な部分もありましたが、『オタヤこども食堂』の方と一緒に作業し、関われたのがとても身になりました」と教えてくれました。

富山県産の米粉が身近になる機会を創出

 富山県産米粉は、JAバンク富山が富山県へ呼びかけて提供を受けたものです。富山県では「とやま米粉消費拡大販売推進事業」を実施し、県産米粉の利用を促進しています。飲食店と家庭での消費拡大を両輪で進めるなか、「オタヤこども食堂」での提供により県産米粉を身近に感じる人が増えることを願っています。また米粉にはスイーツやパンなどでの利用イメージが広がっていますが、シチューの材料になることで食事にも使えることを伝える場にもなりました。富山県農林水産部市場戦略推進課の坂野哲史さんは「実際に食べていただければ、米粉の美味しさをわかっていただけるはずです。このような機会を与えていただき、とても感謝しています」と話しました。

米菓を食べて笑顔になる子どもを増やしたい

 また来場者には、日の出屋製菓産業(富山県南砺市)から米菓のプレゼントがありました。ドラえもんパッケージの「しろえび紀行」や秋冬限定の「チョコっとあられ」など、子どもが喜ぶ米菓をセレクトして会場に持ってきてくれたのです。同社では米菓をもっと知ってほしいという考えから食育を推進しており、子どもたちに米菓を食べてもらう機会を積極的に創出しています。当日は経営推進本部の松邑瑠菜さんも運営を手伝い、JAバンクのスタッフとともに準備や来場者の誘導もしました。「米菓を手にした子どもたちの笑顔を見ると、とてもうれしくなります。米菓を通して幸せを届けるのが私たちの役目なので、子どもたちの幸せな表情に接することができ、会場に来てよかったと感じています。子どものころから米菓に親しんでもらうことで、富山のお米を好きになってもらいたいです」と語りました。

地域創生を、地域の人と一緒に考え、築く

 JAバンク富山では、クイズブースを設置したりキャラクターの「よりぞう」を登場させたりしながら、子どもたちに楽しみを提供しました。
 JAバンク富山は、こども食堂に限らず、地域の課題をステークホルダーと共に解決していくことを進めており、資金だけでなく、人と人を繋げる仲介機能を発揮していきたいと考えています。中田圭亮さんは「今回の開催によって、子どもたちの笑顔に出会えたことが一番の収穫。一部の人に任せるのではなく、地域と連携してステークホルダーの力を借りながら、互いに支えられるような仕組みを作ったり企画を考えたりしていきたいと思います」と語ります。地域にとって身近な金融機関であり続けるための活動が続けられています。

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