片山学園初等科(富山県射水市)
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片山学園初等科では4年次から6年次の児童に対し「Agrication&Fincationプロジェクト〜目指すのは、人つくり。〜」と名付けた、金融と農業を切り口にした授業を行っています。JAバンク富山は同プロジェクトのコーディネート役を務めており、これまでに行政や県内外企業、大学生など、産学官金のプロフェッショナルを講師に招き、先進的な授業を進めるハブの役目を果たしてきました。児童たちは5年次までに「富富富」の栽培や富山特産の「ますのすし」の商品化に挑戦するとともに、農業を取り巻く環境や課題を学ぶなど、慣例にとらわれない授業を受けています。
●参加者
氷見稲積梅株式会社 代表取締役社長 西塚 信司氏
片山学園初等科 校長 原本 幸一氏
株式会社 源 富山駅コンコース売店店長 松井 映里香氏
プロジェクトマネージャー JAバンク富山 吉田 健一氏
2024年6月20日に、6年生の児童が訪れたのは富山県氷見市の国道160号線沿い。道の片側だけで約200本の氷見稲積梅の木が植っている通称「梅ロード」と呼ばれる場所です。収穫体験は氷見稲積梅株式会社の西塚信司社長の指導で実施されました。西塚社長は集まった児童に向かい、例年6月中旬から下旬にかけての約2週間で梅の実を手作業で収穫していることを紹介。実は葉っぱの後ろについていること、皮が柔らかいので傷つけないようにやさしく収穫しなくてはならないことなど、採るときのポイントを伝えます。児童たちは木のトゲや虫にも気をつけながら、一斉に収穫をスタートしました。
「梅干しになった姿しか見たことがなかった」「こんな色で実っているのを知らなかった」「もっと熟してから収穫するのだと思っていた」「梅の表面に細かい毛みたいなのが見える」など、見たり触れたりして感じたことを次々と口にし、台に上がって手を伸ばして夢中で収穫を進めます。約30分で60kgほどの梅の実を収穫しました。
氷見稲積梅は、1949年に氷見市の稲積地区で発見された富山県固有種で、2022年に梅としては全国で初めて農林水産省の地理的表示(GI)保護制度の登録を受けました。種が小さく実が厚い、クエン酸やミネラルが豊富といった特徴を持っています。毎年この時期が収穫期。氷見稲積梅株式会社は、昨年のJA援農支援活動などを通し、農林中央金庫本店(東京)および富山支店との信頼関係を深めてきました。
西塚社長は片山学園初等科の収穫体験を受け入れた理由を「子供の頃の体験は忘れられないものになります。将来の可能性や選択肢を広げるきっかけの一つになることがうれしいです」と話します。氷見市内から収穫体験に訪れる小学生はいますが、市外の学校との交流はこれまでありませんでした。「若い人たちに、氷見稲積梅を知ってもらうきっかけになりました」と、プロジェクトに参加した手応えを口にします。
収穫した梅を事務所兼加工場へ運び、再び西塚社長が収穫後に行う作業を説明します。青梅のまま出荷される梅と、作業所などで加工する梅に分かれますが、梅干し作りはすべて手作業です。手作業で丁寧に作ることや、梅そのものの特徴、GI登録を受けていることなど、いくつもの要素が重なって氷見稲積梅のブランド力につながっていると語ります。
また児童が5年次に学んだ「農業課題」というワードにも触れ「今年は梅の花が咲く時期に寒かったので、例年に比べて3割ほど収穫量が少なくなります」と言い、収量が気候に左右される苦労も語りました。児童は梅ジュースを飲み、梅干しを試食。「普段あまり梅干しを食べないけれど、すごく美味しく感じました」と笑顔を見せていました。
この日は、4年次に「ますのすし」の工場見学や手作り体験、商品化を通して児童と交流した株式会社源の関係者も、収穫や作業場の見学に参加しました。氷見稲積梅を使ったおむすびの開発を進めているのです。同社が運営する「おむすび屋」は、富山駅にある北陸新幹線の改札側に店舗を構えており、連日、行列ができる人気ぶりです。もともと厳選した富山県産コシヒカリを使ったおむすびを販売していましたが、数年前から中に包む具材にも富山県産の食材を取り入れて季節限定商品を販売するようになりました。普段から福井梅を使った商品を販売していますが、JAバンク富山に県内での梅干しの確保を相談したところ氷見稲積梅の紹介を受け、現在、開発が進められているのです。源 富山駅コンコース売店の松井映里香店長は「お店で使っている食材の産地を訪れるのは今回が初めてで、とても楽しみにしていました。実際に収穫や見学を行ったことで、美味しいおにぎりを作りたいという開発への思いが一層強くなりました」と話してくれました。氷見稲積梅を使ったおにぎりは、「おむすび屋」で10月から期間限定で登場する予定です。児童たちも、氷見稲積梅がおむすびになって販売されるのを知り「出来上がったら食べてみたい」と声をあげていました。
氷見稲積梅の収穫体験を通し、原本幸一校長は「第一次産業や食につながる体験はとても貴重で、大人でも経験してきた人は少ないはずです。西塚社長からブランドを守る苦労、農業課題なども語っていただき、昨年度までの学びを振り返ることができました」と話します。氷見稲積梅という地域のブランド食材の存在を知ることができたこと、株式会社源の「おむすび屋」の皆さんと交流したこと、また伴奏役として体験型の授業をコーディネートしているJAバンク富山に対しても、感謝を口にしました。
農林中央金庫富山支店の吉田健一次長は「農林水産業との関わりや金融仲介機能を発揮しながらプロジェクトを推進してきました。今回は私どもの接点を活かし、氷見稲積梅株式会社様、株式会社源様に授業のご協力をいただきました。私たちも当プロジェクトは通して様々な体験と学びを楽しみながら得て欲しいです」と語りました。
金融と農業を組み合わせた先進的な授業によって、将来を生きるスキルを高めていこうとする「Agrication&Fincationプロジェクト〜目指すのは、人つくり。〜」。第一次産業の現場に出ることで、食材を知るだけでなく生産者の思いや苦労に触れることができる場となりました。また生産・加工・流通・販売というフードサプライチェーンの各プレイヤーとの出会いによって、農家と企業、そして消費者の繋がりを知る貴重な機会にもなりました。今後もプログラムの高度化が図られていきます。